2011年にシンガポールで1年働いていた時の事をお話させて頂きます。
当時私が勤めていた会社は、切削工具を製造・販売するメーカー。
面接の際に社長と話をさせて頂いたのですが、とても気さくで優しい方だという印象を受けました。
また会社の事業もニッチな分野で、世界的にもシェアを確保している優良メーカーと言う事で入社を決意しました。
後でエージェントの担当者に聞くと、この社長さんが世界に従業員5000人を抱える日系大手メーカーのアジア支社の社長だったので、そんな雲の上の存在の方が偉そうにせず、同じ目線で話をして下さったことに大変感銘を受けました。
超大手日系メーカーのアジア社長から学んだ事
社長のことをもう少し話すと、「仕事の時は言いたい事は言う。けど普段は周囲をリスペクトし、誰でも友人のように接する」という素晴らしい人格を持った方でした。
一番心に残っているアドバイスは、「アジアで働くのであれば、日本人だからって天狗になるんじゃない。現地の人をリスペクトし、見下す事なく仕事を前向きに進める。それが大事なんだ。」と言われた事です。
「よく日本人の駐在員などで自分の能力の高さを鼻にかける人が多いらしいけど、それは勘違いなんだよ」と教えてくれました。
私自身、シンガポール・フィリピンで働いた経験から、ものすごく思い当たるフシがあります。
おそらく日本で就業経験のある方にとって、後進国の人たちの勤務態度や仕事のスピードにがっかりする人は多いかもしれません。
しかし現地で働いているからには現地の文化を理解する必要があり、それができなければ馴染む事もできずに帰国してしまう人も多いようです。
仕事の役割について
シンガポールで働いていた時の職種は「営業代理」で、インドやベトナムの現地営業マンをサポートするという業務内容でした。
サポートとは価格交渉や技術的サポートなどの事です。
どうして私のような役割が必要だったのかというと、現地の営業マンはとにかく数字が欲しいので安く価格提示してしまう。
だけどメーカーは価格を保つ為に、顧客に技術的なところをアピールして少しでも高く買ってもらう必要がある。
ただしそういった感覚は日本独特のもので、海外、特にアジアではなかなか理解してもらえない部分があるので、私のような日本人の内勤営業部隊がコントロールしたり、営業部隊に啓蒙したりする訳です。
仕事のレベルについて
私が働いたシンガポール事務所の仕事のレベルは、日本に比べると決して高いものではありませんでした。
これはシンガポール全体に言える事かもしれませんが、人の入れ替わりが激しいし、勤務態度も緩いです。
私の同僚も営業未経験が多く、私がそれまで思い描いていた「海外営業=エリート」という図式はただの幻想だと言う事がわかりました。
もちろんそれは職場によるのかもしれません。現地採用と駐在員で違うだろうし、国によっても変わるでしょうし。。
とにかく、シンガポールで現地採用として働いた感想は、日本よりも圧倒的にプレッシャーが少ないという印象でした。
大手企業のすごさ
私がこの企業で関心した事は、仕事上に使用するツールや社内システム等が非常に優れていた事でした。
例えば製品の在庫や注文の納期を確認するWebシステム、技術的データベースを管理するWebシステムなど。。
日本で働いていた会社では納期などに関しては都度工場とFAXで確認していたのが、ここではインターネット上で楽々確認する事ができました。
そこで気付いたのは、社内の基幹システム(イントラネット)というものはその会社の業務効率を劇的に改善できるという事。
その頃から私はインターネット上のテクノロジーに興味を持ちだし、自分が思い描いたWebシステムを作りたいと思うようになりました。
例えば、受注処理、在庫管理、見積管理、技術的データベースを全て一元管理できるEコマースシステムのようなものです。
退社したきっかけ
退社したきっかけは、上記に書いたようにWebサイトやシステムを作りたいと思った事。
それまで製造業の営業職した経験をした事が無かった私にとって、急速に進化するIT業界が楽しそうで仕方がありませんでした。
ただし、色々な人達に「IT業界はやめとけ」と忠告されました。
理由は、始めるのが遅かったことと、今後の日本のIT業界の仕事がどんどん海外に流れるという見解があったからです。
しかし当時の私はなぜか「乗り越える事ができる」という根拠の無い自信から、キャリアチェンジに踏み切る事を決意しました。
営業職を4年ほど経験した結果、製造業の業界であればいつかまたいつでも戻ってこれるかな、と考えたのも理由の一つです。
最後にシンガポールへの就職を考えている方へ
シンガポールには大手企業で働くチャンスがゴロゴロと転がっています。
英語を身に付けるという目的で来れば失敗するかもしれませんが、海外で働いてみたい、大手企業を経験したいという方であれば是非チャレンジ欲しいと思います。